恵和株式会社 KEIWA Incorporated

防錆紙

防錆紙とは何か

防錆紙とは、クラフト紙等の紙に金属のさびを防ぐ効果のある化学物質を含侵させた包装紙のことです。

金属製品、中でも鉄鋼製品をさびから守るためには防錆油が広く使われています。しかし防錆紙を使えば、防錆油を使う必要はありません。防錆油を使わないということは、包装を解いた後に防錆油を取り去る手間が省けます。つまり、防錆紙で包装された製品の受け取り先では工数の削減ができるわけです。

JISに定めてある防錆紙の方法

JISには、鉄のさびを防ぐための包装方法が定めてあります。つまり包装の仕方を5つに分類しているのです。それは概ね、鉄以外の金属にも当てはまるものとみなして差し支えありません。

① 防湿包装
② 防水包装
③ 一般包装
④ 除湿包装
⑤ 脱酸素包装

この5つの分類に関して、それぞれどのような防錆包装材料を使えばよいかが書かれています。
5種類の包装のうち、防湿包装、防水包装、一般包装の3つは,水分の浸入がどれだけ食い止められるかの度合いによる区分です。防湿包装が水分の浸入が最も少なく、防水包装は水の浸入は防ぐけれども水蒸気の侵入は防げない包装方法、一般包装は水分の浸入防止策が全然施されていない包装です。

防錆紙はこれらの3種類のいずれにも使われており、防錆油を必要としない防錆包装方法になっています。

そして防錆紙の使い方は、大きくラッピングと密封空間内に挿入する方法の2種類に分かれます。ラッピングは言うまでもなく、製品を直接防錆紙で包む方法です。密封空間内に挿入する方法は、ポリエチレンフィルムの袋や防湿性のダンボール等の中に、製品と一緒に入れた防錆紙で製品をさびから守るというものです。

防錆紙の分類方法は2つに分かれる

防錆紙の種類については、どのような金属の防錆をするかよって区分する方法と,防錆紙の使用方法によって区分する方法という2つのやり方があります。

➀防錆対象金属別
防錆紙には、対象とする金属ごとに異なった種類のものがあります。たった1種類の防錆紙であらゆる金属に対応することは不可能です。なぜならば、防錆の対象となる金属に応じて、効果のある防錆剤が異なるからです。たとえば鉄鋼専用の防錆紙は、銅には効力を発揮しません。逆に銅用の防錆紙は、鉄鋼に対する効力は弱いものです。
ですから、鉄鋼と銅とが同梱されるような場合には、どちらの防錆紙も使えないのです。最近では、鉄と非鉄金属共用の両方に使える防錆紙が開発されてはいますが、どうしても鉄鋼専用の防錆紙の効力に一歩譲るというのが現状です。

②使用方法別
金属をラッピングする材料として防錆紙を使う時には、包装作業に耐え,包装した製品の運搬にも支障のない強さが必要です。
また密封包装ができる場合は、紙だけではなく片面にポリエチレンラミネート加工を行って、防湿バリヤーの機能を持たせるのが望ましいといえます。そうすると、包装の外からの水分の浸入を防げるとともに,防錆剤の気化してしまうのを抑えられるので,防錆効果が長く持続するのです。
一方、密封空間内に挿入して防錆紙を使う場合は、強度等は求めなくてもよく、厚さの薄い紙をベースにしたもので、防錆剤がしっかりと働きさえすればよいことになります。

防錆紙の防錆剤は気化しやすいか

鉄鋼用の防錆剤で最も知られているのは、ダイカン(DICHAN:亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム)という物質です。また銅用の防錆剤にはベンゾトリアゾール(BTA:1.2.3-ベンゾトリアゾール)が有名です。防錆紙に使われているこれらの防錆剤の多くには、わずかなりとも気化性があります。

防錆紙に使われている防錆剤は、一般には気化性防錆剤と呼ばれていますので、非常に気化しやすい物質であるかのような印象を与えてしまいますが、実際のところは、気化のスピードは水の蒸発に比べれば問題にならないほど小さなレベルなのです。

防錆紙を使用する際のポイント

➀金属に合致した防錆紙を使う
最も大切なことは、包装の対象となる金属の種類に合ったものを使うということです。もし合致しない防錆紙を使うと、さびを防ぐのではなく助長することになる場合があるからです。

②めっき製品には注意を払う
めっきの表面の防錆が目的なのか,それとも下地の金属が対象なのか,あるいは両方を保護する必要があるのか、それぞれについて使う防錆紙が異なるのです。
また、たとえば,亜鉛めっきの鋼板の場合、めっき表面に化成処理がなされている、亜鉛用の防錆剤のピラゾロンが使われている防錆紙は亜鉛に直接作用できず、防錆の効果はありません。

③防錆紙を使う前に洗浄する
防錆紙には、金属製品についている汚れ等の腐食性物質を取り除く作用はありません。もし金属の表面に腐食性物質がついたままの状態ならば、防錆剤は金属そのものに到達できないのです。指紋や汗や汚れで覆われた部分への防錆効果は中途半端なものになってしまいます。

④防錆紙は金属製品に密着させる
先に述べたように、防錆紙に浸みこませてある、あるいは塗布されている防錆剤は、水よりも気化しにくい物質です。ですから防錆紙と金属の表面とが離れていると、必要な量の防錆剤が金属表面に到達するまで長い時間がかかってしまうのです。むしろ防錆剤が金属表面に作用する前に金属製品の表面には水が吸着することも充分に考えられます。そして悪くすると、結露が起きて腐食が進行してしまう結果にもなりかねません。

⑤防錆紙は水に濡らしてはいけない
防錆剤には水溶性の化学物質が使われ、しかも接着剤は使われていません。そのため防錆紙が水に濡れると防錆剤が簡単に流れ出てしまうことになります。雨水がかかるような場所、結露によって天井から水滴が落ちるような場所、床が濡れるようなところでの防錆剤の保管は禁物です。
ちなみに直射日光が当たるところや高温にさらされる場所での防錆紙の保管も好ましくありません。

防錆フィルムについて

防錆フィルムは、ポリエチレン等の樹脂に防錆剤を練り込み加熱することで樹脂を液状にしてフィルム状に押し出して製造されるタイプと、プラスチックフィルムの表面に接着剤と一緒に防錆剤を塗布して製造されるものの2つに分かれます。現在市販されている防錆フィルムの大半は前者の練り込みタイプです。

後者の塗布タイプは、原理的には防錆紙と同じです。ですから防錆力の高いものが製造可能です。一方、練りこみタイプは製造の過程で高温にさらされるので、その温度に耐えられる防錆剤や気化しにくい防錆剤しか使えません。

それでも練り込みタイプの方が多く普及しているのは、塗布タイプの製造コストが練りこみタイプよりも高いからです。塗布タイプは、防錆剤を溶かす溶媒と防錆剤をフィルムにくっつけるための接着剤が必要になるのです。

防錆紙と防錆フィルムの比較

➀防錆力は防錆紙の方が優る
防錆紙の防錆力は、概ね防錆フィルムより優れています。防錆フィルムの大半が、先に述べたように樹脂の中に防錆剤を練り込んで作られるので、防錆フィルムに含まれている防錆剤が防錆紙よりも格段に少ないためです。しかし、接触して使用する場合は直接防錆剤が触れるため防錆効果に大差ありません。

②防湿性は防湿フィルムの方が高い
防湿性は明らかに防錆フィルムのほうが勝っています。ただし、包装内で結露した場合、その水を吸収する能力は防錆フィルムにはありません。ですから、防湿フィルムで包装作業をする際は、その作業環境の湿度に注意が必要です。

③防錆フィルムはプラスチックの性質を持つ
防錆フィルムは柔軟性が高く防錆紙の様なコシはありません。しかし透明性に優れ、ヒートシール(熱で溶かし接着する)させることができます。また塵も発生しにくいといえます。それらの性質を防錆紙で実現することはできません。

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