恵和株式会社 KEIWA Incorporated

薄膜

薄膜とは何か

薄膜は「はくまく」と読みます。フィルター等で使う膜や、薄く延ばされた金ぱく等膜そのものことを指す場合もありますが、ガラスやシリコン基板等の上に、ごく薄く平らに存在する膜のことを、薄膜と表現することの方か多いでしょう。そうした薄膜は、それ自体では存在できず、必ず基板の上にあるのです。

ですから通常は、薄膜は真空成膜技術等で作った膜のことをいいます。その材料によって金属薄膜、半導体薄膜、絶縁体薄膜等があります。レンズのコーティングに使う光学薄膜のほか、最近はダイオード、トランジスター、集積回路等の電子部品、コンピューターの記憶素子に用いる磁性薄膜、クライオトロンという素子に用いる超伝導薄膜等、応用範囲はひじょうに広いといえます。記憶素子とは、コンピューターの回路等で、情報を何らかの形で記憶させ、後で読み出せる素子のことです。

薄膜は、文字通り薄い膜ではありますが、厚みが1ミクロン以上ある場合は、薄膜という言い方をしないのが一般的です。つまり薄膜は、ナノレベルの膜です。厚い膜はめっき膜と言ったりし、厚くして基板から剥がすと電鋳と表現することもあります。

薄膜の用途

先ほども述べたように、通常、薄膜は真空成膜技術等で作った膜のことですが、その薄膜はどのように活用されているのでしょうか。薄膜は、主には電子部品等で使われます。たとえば、ハードディスクの記録面は磁性の薄膜です。液晶ディスプレイの画面もいろいろな薄膜を重ねて作られています。半導体の細密な回路は、薄膜をパターン形状に加工して、それを重ねています。

また電子部品以外にも、薄膜には様ざまな使い道があります。たとえば、物体の表面の強化や保護といった目的です。製造業でよく使用する金型や工具は、その表面を固い薄膜で保護することがよくあります。
また、薄膜は光の制御のためにも用います。さらに金属製品の表面を薄膜によって色付けすることもあります。薄膜によって色付けする方が、塗装をするよりも長い時間、その品質が安定するからです。また、自動車のヘッドライトの光源の周りにも光をよく反射する薄膜が使われています。
以下、光学的な用途、電磁気的な用途、機械的な用途、科学的な用途に分けて解説します。

(1)光学的な用途
➀反射防止膜

眼鏡、カメラ等のレンズ、自動車のヘッドライトの反射を防いで、光の透過率を高めるために、光の干渉現象を利用して構成した薄膜です。原料は、フッ化マグネシウム、シリカ、ジルコニア、アルミナ、5酸化タンタル等が一般的です。

②フィルタ膜
ある波長の光だけを透過させる、または反射させるような光学薄膜です。たとえば緑色の光だけが通るや、可視光線は通るけれど赤外線は反射してしまうといった特性を持つものです。

③透明導電膜
太陽電池や液晶ディスプレイパネル等に透明電極として使われる膜です。酸化錫や錫を混ぜた酸化インジウム)が用いられています。


(2)電磁気的な用途
➀集積回路

集積回路(IC)は、複雑な電気回路を顕微鏡でしか見えないくらいの小さな世界に閉じ込めたものです。真空を利用した薄膜加工技術を使って製造されています。

②表示デバイス
今日、表示デバイスとしては、別の項で説明しているフラットパネルディスプレイが主流です。フラットパネルディスプレイの製造においては、一般的には薄膜作製技術がキーテクノロジーです。先ほどの透明導電膜はもちろんですが、さまざまな薄膜が用いられています。

③光ディスク
各種のコンパクトディスクや様々なデジタルディスクには、アルミニウムの反射膜が成膜されています。

④太陽電池膜
シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られるアモルファスシリコン膜が、太陽電池に使われています。このことは、太陽電池の低コスト化に貢献しています。


(3)機械的な用途
➀耐摩耗性膜

ドリルやバイト等の切削工具、あるいは様々な金型の表面に硬質の膜を形成して長寿命化が図られています。

②固体潤滑膜
軸受等のすべり面の摩擦を減らすためには、普通ならば潤滑油やグリースを使います。
しかし、そのような潤滑油が使えないような環境もあります。その代表的なものが宇宙空間です。人工衛星のような宇宙で使われる機械の軸受や歯車には、固体潤滑膜が用いられています。


(4)化学的な用途
➀耐食性膜

金属の錆を防ぐためには、一般的には塗装をしたりめっき技術が用いられます。これに加えて、物理的蒸着や化学的蒸着による薄膜も使われるようになってきました。どちらの場合も、セラミックや金属膜を作製できるので、その金属を使用する環境に適合した膜の種類や膜形成方法を選択する必要があります。

②バリヤ膜
食品の包装にはプラスチックフィルムが使われています。食品を保存するためには、特に酸素の侵入を遮断することと紫外線をカットすることが要求されます。そのために、プラスチックフィルムを物理的蒸着することで薄膜を形成して用います。

薄膜をつくる方法

薄膜を作る方法はいくつかあります。代表的な方法は真空成膜で、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させる方法です。

そして真空成膜もその方法によっていくつかに分かれます。材料を熱で蒸発させて、基板の上で冷やして固体にする方法を真空蒸着といいます。材料にイオンをぶつけて材料を基板に向かって飛ばす方法をスパッタリングといいます。
真空成膜以外の薄膜技術としては、電解めっき、無電解めっき、ウェットコーティング等があります。

それ以外にも、熱で柔らかくした金属粉を飛ばして固める溶射、塗装、スプレー法等もありますが、これらの多くは通常は膜の厚さがミクロンレベル以上になりますので、薄膜ではなく塗膜とか皮膜という表現が適切です。

スパッタリング薄膜について

スパッタリングは、薄膜技術の一つで、しかも代表的な技術といえます。半導体のウェハプロセスで使われる膜の多くがスパッタリング膜です。また液晶ディスプレイやLEDで使われる透明導電膜もスパッタリングで作られています。

スパッタリングは、材料を選択する際の幅の広さ、高い密着性、制御のしやすさが特徴です。工具等のコーティングや、半導体や液晶、光学素子等の機能膜形成に用いられています。さらに、プラスチックの表面の装飾等にも活かされています。

スパッタリング現象とは、物質にイオン等を高速で衝突させることにより、分子が叩き出される現象のことです。この現象を利用して、対象物にコーティングをしたり、表面の質を変化させてしまう、これがスパッタリングです。

私たちにとって身近な例としては、蛍光灯を使用しているとガラス管の端がしだいに黒くなってくる現象があります。これは蛍光灯のフィラメントが放電によって少しずつ弾き飛ばされ、ガラス管に付着しているためです。これもスパッタリング現象です。

ただし、スパッタリングによる膜は、他のコーティングの方法と同じように、対象物の表面の状態に大きく影響されます。表面がもろかったり、何か異物がついていたり汚れていると、高い品質の膜をつけることはできないのです。ですからスパッタリング前の表面は堅牢で美しいことが求められるのです。また、対象物が真空の中でガスを放出するものである場合、そのガスが混ざって膜の質が変化してしまう可能性もあります。

スパッタリングは、熱に弱いものに対してコーティングすることは可能ですが、高い品質の膜を形成させるために、対象物そのものを加熱することが必要になる場合があります。また表面がプラズマにさらされることによるダメージを受ける可能性も考慮する必要があるのです。

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