TCFD提言による情報開示
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TCFD提言による情報開示
私たち恵和は、環境方針である「自然と調和した持続可能な循環型社会の発展に貢献し、環境負荷低減の取り組みを推進してまいります。」に基づいて、環境分野での取り組みを積極的に推進しております。その中で、気候変動が事業に及ぼす影響も重要なテーマと認識しており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)※1提言のフレームワークを活用した気候変動リスク・機会が及ぼす影響の評価と、それを受けた対応策の検討及び事業戦略への統合が脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、持続的成長と企業価値向上に資するものと考え、恵和は2021年9月にTCFD提言に賛同いたしました。今後はTCFDフレームワークに基づいて情報開示を進めると共に、シナリオ分析を通じた中長期的な企業価値向上とCSV(Creating Shared Value)の実現を目指してまいります。
※1
TCFD(Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)とは、2015 年に金融安定理事会(FSB)の要請により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」です。2017 年6月に公表された TCFD の最終報告書では、気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響について把握し、自主的な情報開示のあり方を提言しています。
ガバナンス
私たち恵和は、気候変動を含む環境問題への対応を経営の重要な課題の1つとして認識しております。気候変動に係る重要事項は代表取締役会長を委員長とするCSV委員会にて審議を行い、定期的(年に1回以上)に取締役会に報告することで、恵和の環境課題への対応方針および実行計画などについての議論・監督が適切に図られる審議体制をとっております。また、その決定事項は各部門の担当執行役員で構成される業務執行会議へ指示・報告することで、環境課題への審議・決議内容の全社的な経営戦略への統合を図っております。
戦略
私たちは、気候関連のリスクおよび機会の特定と当社の環境経営への統合を図るにあたり、「脱炭素社会へ移行するシナリオ」及び「地球温暖化が深刻化するシナリオ」の2つの前提条件で、シナリオ分析を実施しその影響を評価しました。気候変動に対する影響度及び対応策の考察・分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)が提示する4℃シナリオ※2と2℃未満シナリオ※3を考慮し、それぞれの世界観における2030年時点での恵和への影響を評価しております。
※24℃シナリオ | ※32℃未満シナリオ |
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産業革命期と比較して21世紀末頃に世界平均気温が4℃上昇するシナリオ | 産業革命期と比較して21世紀末頃の世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑制されるシナリオ |
(参考) IPCC:RCP8.5 IEA WEO2021:STEPS |
(参考) IPCC:RCP2.6 IEA WEO2021:APS SDS NZE2050 |
4℃シナリオにおいては継続的な化石燃料の需要拡大などを背景に、原油価格の上昇によるプラスチックをはじめとした石油由来原材料の価格高騰を予測しているほか、気象災害の激甚化による直接的な被害を想定しております。対して2℃未満シナリオにおいては、脱炭素化に向けたカーボンプライシング導入による影響が主な事業運営コストとして財務的なインパクトとなることが予想される一方、グリーンエネルギー車市場の拡大が当社の自動車関連製品の売上増に寄与する可能性を確認しております。その他評価した各リスク及び機会については、以下一覧表のとおり影響の特定と評価を行っております。
項目 | 2030年における影響 | 現在の取り組み例 | ||||
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影響要因 | 区分 | 特定した具体的影響 | 4℃ |
2℃未満 |
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脱炭素社会への移行による影響 | カーボンプライシング | リスク | 炭素税の導入による事業運営コスト増加 温室効果ガス排出削減に伴うコスト増加 |
小 | 大 |
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原材料価格の上昇 | 原油価格変化に伴うプラスチック価格の増減 | 大 | 小 |
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電力価格の上昇 | 再生可能エネルギーへの移行に伴うコスト増加 | 小 | 大 |
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低炭素技術の進展 | 機会 | EV普及による関連製品の売上増加 太陽光発電の普及による関連製品の売上増加 |
小 | 大 |
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地球温暖化に伴う物理的影響 | 気象災害の激甚化(洪水・高潮) | リスク | 被災による直接的な損害発生 サプライチェーン寸断による原材料の供給停止 |
大 | 大 |
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気象パターンの変化 | 平均気温上昇に伴う空調コスト増加 | 中 | 中 |
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機会 | 製品の耐候性能向上など適応商材の展開による適応ニーズへの対応 | 中 | 中 |
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【評価指標】
大:営業利益実績(2021年度)に対して、±1%(約30百万円)以上の影響を試算した項目
中:営業利益実績(2021年度)に対して、±1%未満の影響を試算した項目
小:試算した影響額が極小、もしくは影響が無いと思われる項目
※定量評価が困難な影響は定性的な考察を踏まえて評価し、当該項目はグレー塗りで示しています。
これらの分析結果に対する現在の取り組み状況として、リスクの回避及び緩和に向けては、「自然と産業の調和を創造する」を経営理念に、その一環として環境負荷の少ない材料の調達を推進しております。また物理的被害に対しても、BCPの定期見直しを実施しております。機会獲得に向けた取り組みでは、2023年度にRE Action※4を宣言し、事業所への太陽光発電設備の導入を推進しております。さらに、クリーンエネルギー車向けフィルムなどの省資源・省エネルギーに貢献する製品の拡大を進めております。
※4
RE Action:企業が事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%にコミットする協働イニシアチブ
恵和は、将来4℃シナリオ及び2℃未満シナリオのいずれのシナリオに至る場合にも適応できるよう、リスクに対しては適切な回避策を策定し、マーケット変化へも柔軟に対応し成長機会とできるよう戦略へ反映すると共に、今後も各将来予測シナリオを踏まえた考察を深化してまいります。
リスク管理
私たち恵和の事業が気候変動によって受ける影響の把握にあたってはシナリオ分析を活用し、CSV委員会において気候変動によるリスク・機会を特定・評価しております。特定したリスク・機会は発生頻度や影響額など定性・定量の両側面から評価しています。重要度の大きなリスクに対しては、リスク管理委員会と連携し対策を立案した後、取締役会に報告し、協議された上で対応を実施いたします。
指標と目標
私たち恵和は、気候変動課題において、温室効果ガス排出量を指標とした目標の設定及び進捗の管理に取り組んでおります。2021年のCO₂排出量は、削減目標1,700tに対して削減実績2,160tで「達成」となりました。現在恵和では、SDGsの目標年とされる2030年に、2013年比46%以上のCO₂排出量(SCOPE1+SCOPE2)の削減を目標とし、その目標達成に向けた脱炭素経営を推進しています。なお、GHGプロトコルが規定する算定基準に基づくCO₂排出量実績は以下の通りです。
CO₂総排出量 実績 | |||
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2013年 | 2021年 | ||
CO₂総排出量 | 14,868t- CO₂ | 10,124t- CO₂ | |
内訳 | SCOPE1排出量 | 4,167t- CO₂ | 3,380t- CO₂ |
SCOPE2排出量 | 10,701t- CO₂ | 6,744t- CO₂ |